■週刊G通信■
最終章


サウンドプログラマー:Gシマ


あれから半年、季節はすっかり変わり日に日に暑さを増してゆく今日この頃、皆様はいかがお過ごしだろうか。 我々といえば、勤務地も変わり、心も体も心機一転といったところである。

さて、約半年ぶりにお送りする週刊G通信は、発売前にはお伝えすることのできなかった様々な出来事をお送りすることとする。


『7.8矢印/sec.』

皆様はもうご覧になっただろうか?総矢印数655を誇るDDR史上最凶の譜面。 そう、「PARANOIA Survivor MAX」の鬼譜面のことである。

これをクリアする為には、約7.8矢印/sec.をこなす必要がある。 当然ながら制作サイドにはこれをクリア出来る者は居らず、譜面を作った本人も机の下でシミュレートするにとどまっていた。 かつての当コーナーで「一生かかってもクリアできない」と言っていたのはこの譜面の事である。

余談だが、過去に一世を風靡したゲーム名人は16連射/sec.という触れ込みであった。


『フォ〜ハンドレッド、コンボゥ!』

「DanceDanceRevolution」のシングル激譜面のコンボは399である。これには深い訳が存在する。

当初はちょうど400コンボとなる様に作られていた訳だが、実際に搭載してみると思わぬ不具合が生じた。 この楽曲の最後は「ダンスダンスレヴォリューション!」という、猛烈にカッコいいエンディングで締め括られるのだが、 そこへ覆い被さる様に「フォ〜ハンドレッド、コンボゥ!」の声が発せられてしまうのである。 これではみっともない。已む無く矢印一つに消えて頂く事となり、結果、399という微妙なコンボ数となった。

ちなみに覆い被さってきた声の持ち主は、テレビ番組等でもご活躍なさっている某外国人の方である。


『息抜き?』

当時、高難度曲のシーケンスを連続して作っていたGは、精神的、体力的に疲労度が限界まで達していた。

エディットを行った事のある方ならば味わって頂けるであろう譜面地獄。 1曲につき7譜面という過酷な状況がおそらく正しい判断を鈍らせていたに違いない。 通常ならば考えの及ばない方法で息抜きをしようと思ってしまった。 過去曲の譜面追加である。

Gが譜面作成にかかわる事となったMAX以前の楽曲に関しては全くの未開の地。 そんな中でもDDRを代表する名曲と言えばやはり「BUTTERFLY」であろう。
これに今のテクノロジーで譜面を付けたらどうなるのか?
もし俺が作ったらどうなったのか?
掻き立てられる想像、脳裏によぎる東洋テイストのメロディーと矢印。
これは息抜きなんだという自己暗示の元、かくして「BUTTERFLY」の鬼譜面は完成した。

しかしながら作り終えたのはシングルのみ。 実際に収録するにはダブルも作成しなければならないという事実に気が付くにはそれほど時間を要しなかった。


『リサイクル』

制作途中にはさまざまな出来事が起こる。本来ならば収録しようと思っていたもの、逆に収録予定ではなかったもの。 それらの中には譜面作成まで行われたにもかかわらずお蔵入りしたものも少なくない。

今作も例外なくそのような楽曲はあった。 やはり作った譜面には少なからずの情がある。 しかし、楽曲構成に合わせ譜面も作成されているので、情があっても救ってやれないのも事実。

そんな中、なんとか救済を行えそうなモノを偶然に発見できた。 実際にやってみるとこれはこれでなかなか良い具合(に感じられた)。 めでたく収録することとなった。 今となっては譜面に対する思い入れが強かったのかもしれないと、多少の反省材料は残る。

余談だが、同じ目論見を働いた某プログラマの場合、残念ながら全会一致で否決され、作られた譜面は電子の藻屑となった。


『バグ』

超スローなテンポに合わせて現れる矢印の絨毯。ご存知「bag」である。 名前の由来は楽曲をメインで構成する楽器「バグパイプ」からきているのはお察しの通り。 しかしながらこの楽曲、更なる「バグ」も内包していたことは当時は知る由もなかった。

思い起こせば譜面作成当時にさかのぼる。 制作で使う譜面作成ツールにはある程度の分解能しか搭載されていない。 とはいえ通常の楽曲では絶対に使うことはありえないくらいの分解能であった為、全く不自由を感じることはなかった。

ところが、である。 この楽曲、通常では考えられないようなスローテンポな上に基本が3連という、前代未聞の楽曲構成である。 譜面をツール上で作ることも不可能であった為、已む無くサウンドの別ツールでデータを作成し、 それを更にコンバートするという強行手段で譜面を作成することとなった。

これが全ての悪夢のスタートラインであった。 通常のツールで作ったわけではないので譜面に関しても実際に動かしてみないと出来を判断することが出来ない。 イレギュラーな手順に戸惑いながら譜面をつくり、画面上で確認して修正を加える。 このような手順が延々と続けられた。

何度目かの修正を行った後、とある怪現象が発生する。 矢印がたまに奇妙な動きをするようになったのだ。 当然そのような仕掛けが存在するわけでもなく、その画面を前に硬直する駄洒落プログラマ氏とG。 互いにデータを洗い直すも該当要素は見つからず、頭を抱えてうなだれる。 その症状の原因追求は後に回す事とし、まず頭数を揃えることを目的に切り替え、別のデータを弄る。 そして何気なく「bag」の譜面を見てみると…。

そう、何の問題もなく動いているのだ。 この時、こう思わずにはいられなかった。「名は体を現す」と。




さて、今回の週刊G通信、お楽しみ頂けたであろうか。

久々の執筆の為、また半年という長い時間が経過していた為、リアリティーが失われてしまっているかもしれない。 瞼を閉じれば矢印の残像が残っていたあの頃とは違い、瞼を閉じれば…。

それはそれとして、膨大な楽曲、譜面を擁するDDR EXTREME。 半年経過した今でもまだプレイしていない楽曲などはないだろうか? 今日取り上げたものも含め、まだまだ遊びがいのある要素があるかもしれない。 暫くご無沙汰の皆様も、毎日のようにプレイされている皆様も、ずっとずっとDDRを遊び続けてほしい。

それでは、今回で正真正銘の最終回。 長らくご愛読頂きありがとうございました。 また別の機会で皆様とお会いすることもあろうかと思いますが、その時はまたよろしくお願いいたします。では!